国へのIR申請が締め切られた28日までの状況を、毎日新聞が、特集記事(4/29)でふり返っています(井川諒太郎・村尾哲記者)。
抜粋させてもらいます。──
● 斉藤鉄夫国交相は、大阪と長崎しか、IR誘致の申請がなかったことについて「コメントは差し控えたい」としたが、国交省幹部の一人は「まさか2か所になってしまうとは」と肩を落とし、別の幹部も自嘲気味に話した、「すっかり不人気な政策になった」と。
IRは、安倍政権が打ち出した観光戦略の目玉で、IR実施法が成立した18年当時は、訪日客が3000万人を突破して、自治体による誘致合戦は当然のように熱を帯びた。
しかし新型コロナ禍で状況は一変。
21年の訪日客は25万人に激減。大手カジノ事業者の経営も悪化して日本から次々に撤退。
菅義偉首相(当時)のお膝元である横浜では、市長選で反対派候補が当選し、誘致計画は撤回された。
19年12月にはIR汚職が発覚し事件になり、超党派の議員連盟は、活動停止状態に。
● 大阪と長崎のIR整備計画は、今後、国交省内に設けられる審査会委員会(経済や観光の専門家や医療関係者ら7人で構成。委員長は 竹内健蔵東京女子大教授)が、審査する。
その審査は非公開で、結論が出される時期は示されていない。
● IR施設計画は、実はすでに時代遅れになっていると多々指摘されている。
政府が定めたIR施設の要件について
ホテルは──客室数が国内最大の品川プリンスホテル(約3700室)並みの規模を、満たさなければならない。
国際会議場は──国内最大の展示場・ビッグサイト(約11万5000平方㍍)並みの広さで、つくらなければならない。
IRに詳しい静岡大の鳥畑与一教授の話。
「国際会議場もカジノもすでに、オンライン化が世界的に進んでいる。巨大なハコモノに人を呼び込む従来型のIRは、行き詰まっており、ラスベガスの大手事業者も見直し始めている。
ビジネスの前提条件が変わったにもかかわらず、従来の計画に、地域経済の将来を託すのは危うい」
● 大阪にも長崎にも不安要素がある。
・大阪府市は「世界最高水準」のIRを目指すとしている。開業予定は2029秋~冬。
初期投資額は1兆8000億円。そのうち約5300憶円は事業者=米国MGMとオリックスのグループが出資し、残る約5500億円は銀行から借り入れる予定。
ただ、事業者との基本協定に次の規定が盛り込まれた、 「新型コロナの終息が見込めない場合などは、事業者の判断で、契約を解除できる」と。
つまり事業撤退のリスクが付きまとう。
予定地の人工島・夢洲を土壌改良するために、790憶円を大阪市が負担するとしたが、地盤沈下の可能性も指摘され、さらに費用は膨らむかもしれない。
・長崎IRの開業予定は2027年秋ごろで、テーマパーク・ハウステンボスの隣接地に誘致する。
初期投資額は約4383億円。その32%を、事業者=オーストリア国有企業傘下の「カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン」(CAIJ)が出資する。
しかし初期投資の残額(68%)を、どこが拠出するのかを県は明らかにしていない。「公表を控えるよう要望がある」ため、という理由で。
大石賢吾知事は「利益を九州全体で享受したい」と大いに期待を語るが、長崎県は実は情報公開の不十分さや、資金調達の実現性を、疑問視されてもいる。
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ほんとうにIRを、今の条件で日本につくって採算は合うのでしょうか。
走り出したら止まらない悪しき巨大公共事業に、なりはしないでしょうか。