ノンフィクションライター・松本 創氏が、東洋経済に書いた12月25日の記事より、大阪IRについての部分を抜粋します。
大阪市長選「ポスト松井」を懸けた前哨戦の意味 維新の「世代交代」と非維新「カジノの是非」
大阪IR誘致をめぐって、国交省が「年内の認定判断は厳しい」と見解を示した。最大の理由は、建設予定地である大阪湾の人工島・夢洲(2025年万博の会場でもある)の地盤問題。液状化や地盤沈下が指摘され、費用や安全面の懸念が増している。
自民の川嶋広稔市議は、市政報告会で自らのスタンスを次のように語った。
「問題だらけの大阪IRの計画には反対する」
「橋下氏も松井氏も当初、インフラも含めてすべてカジノ事業者がお金を出す、(府市は)一円も出さなくていいと言っていた。それが気づけば、万博関連も含めてすべてのインフラ整備を大阪市がやることになり、液状化や土壌汚染対策に788億円もの負担をすることが決まった。地盤沈下の問題もあり、さらなる追加負担も予想される。下手をすれば10年20年単位で1000億2000億かかるだろう」
「夢洲では高層建築を支える基盤となる洪積層まで80mもの杭を打ち込む必要があるのですが、大阪湾の洪積層は長期にわたって沈下していく特異な地盤であることが指摘されている。あんなところに建てては絶対だめだと防災学者は言います。このことは国交省にも伝えています。とんでもない費用がかかり、泥沼になりますよ、と」
土壌以外にもさまざまな問題が指摘される。
コロナ禍以後、世界のカジノは急速にスマホなどのオンラインに移行していること。MICE(国際展示場・会議場)の規模が当初計画の5分の1に縮小され、近隣の既存施設にも及ばないこと。
年間来場者2000万人、経済効果1兆1400億円と見込む、算定の甘さ。
事業者(MGM・オリックス コンソーシアム)への土地の賃料が不当に安く設定され、その根拠となった不動産鑑定結果が4社中3社で一致していた不自然さを毎日放送が報じている。など。
この7月、住民投票を求める署名を約20万筆あつめた市民団体は、活動を継続し、12月からは「夢洲カジノを止める 府知事と市町村長・議員をつくろう」と銘打って統一地方選へ向けた運動を始めた。
先述の川嶋市議は、市政報告会では「『反維新』ではなく『非維新』の大きなうねりを作るために、もう一つの選択肢を示していきます」と宣言。
単一の政党色を打ち出す維新に対し、理念や政策の方向性を同じくする市民が政党にかかわらず草の根的に運動を展開するイメージだろう。
反維新側が候補者を擁立でき、大阪IR計画の認定が統一地方選後までずれ込めば、選挙戦はカジノの是非をめぐる住民投票の様相を帯びるかもしれない。